2024年、Dong, G教授率いる研究チームが発表した新たな研究が、スポーツ科学に衝撃を与えました。この研究は、水素吸入がスプリントインターバルトレーニング(SIT)のパフォーマンス向上と疲労軽減に寄与する可能性を示唆しています。
目次
スプリントインターバルトレーニングと疲労の課題
SITは短時間で高強度の運動を繰り返すトレーニング法で、運動効率を最大化する方法として知られています。しかし、SIT中の激しい運動は活性酸素種(ROS)の過剰産生を引き起こし、酸化ストレスや疲労がパフォーマンス低下の原因となります。水素吸入は、選択的に活性酸素を除去する特性を持ち、疲労軽減や運動パフォーマンスの改善が期待されています。
研究概要
本研究では、水素吸入がSITのパフォーマンスに与える影響をメタボローム解析を用いて検証しました。健康な成人男性10名(平均年齢23.6±2.2歳)が対象で、クロスオーバーデザインで実験を実施。被験者は、60分間の水素吸入またはプラセボ吸入後に以下を行いました:
- SITプロトコル: 30秒間の全力スプリントを4回、4.5分間の休息を挟む形式
- 吸入条件: 水素と酸素を2:1の割合で混合したガスを30mL/sの流量で供給
- 評価: 血液サンプル採取とパフォーマンスデータ(平均パワー、疲労指数、ピークパワー到達時間)を測定し、代謝物を解析
主な結果
- パフォーマンス向上
- 4回目のスプリントでの平均パワー(MP)が有意に向上(6.32±0.74 W/kg vs 5.73±0.77 W/kg, p=0.029)。
- 疲労指数(FI)が有意に低下(65.3±12.3% vs 75.2±14.4%, p=0.001)。
- ピークパワー到達時間(TTP)が短縮(4.72±2.62秒 vs 9.10±4.00秒, p=0.005)。
- 1回目と4回目のスプリント間の平均パワー低下が有意に抑制(-2.02±0.97 W/kg vs -2.77±1.00 W/kg, p=0.006)。
- 代謝物の変化
- 水素吸入後、アセチルカルニチン、プロピオニル-L-カルニチン、ヒポキサンチン、キサンチンが有意に上昇。
- パスウェイ解析では、水素吸入が脂肪動員を促進し、コエンザイムA合成を強化する可能性を示唆。
- グリセロリン脂質代謝の活性化やインスリンレベルの抑制も確認。
- エネルギー効率の向上
- 水素吸入はミトコンドリアの脂質代謝を促進し、脂肪酸のβ酸化を加速することでATP産生を増加させる可能性があると結論付けられました。
考察と結論
この研究は、水素吸入がSITのパフォーマンスを向上させるメカニズムを明らかにしました。特に、後半のスプリントでの疲労軽減と出力向上は、スポーツ選手やトレーニング愛好家にとって大きな利点です。また、代謝物の変化から、脂肪酸代謝の促進によるエネルギー効率の改善が示唆されました。
今後の展望
さらなる研究により、水素吸入の最適なタイミングや適用範囲を明らかにすることが期待されます。本研究の結果は、スポーツ科学における新たな可能性を切り開くものであり、トレーニング効果を最大化する新しいアプローチとして注目されています。
用語解説
- スプリントインターバルトレーニング(SIT): 短時間の高強度運動と休息を繰り返すトレーニング方法。
- メタボローム解析: 生体内の代謝物質を網羅的に解析し、代謝経路を特定する手法。
- 活性酸素種(ROS): 酸素由来の反応性分子で、細胞に酸化ストレスを引き起こす。
水素吸入は、パフォーマンス向上と疲労軽減を両立する革新的な方法として、今後のスポーツ医学やトレーニングの現場での活用が期待されます。
参考文献
MDPI


Hydrogen-Rich Gas Enhanced Sprint-Interval Performance: Metabolomic Insights into Underlying Mechani...
(1) Background: The diversity of blood biomarkers used to assess the metabolic mechanisms of hydrogen limits a comprehensive understanding of its effects on imp...
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