水素吸入がアスリートの睡眠と疲労回復に与える影響に関する調査
名古屋高校サッカー部での実証試験
- はじめに
水素ガスの吸入は、近年、健康維持やパフォーマンス向上に関心が高まっている治療法の一つです。水素は強力な抗酸化作用を有し、特に疲労回復や身体のストレス軽減に対する影響が示唆されています(Ohsawa et al., 007)【参考文献1†source】。酸化ストレスや炎症を軽減することにより、身体の修復機能をサポートし、特にアスリートのような高ストレス状態での肉体的、精神的なリカバリーに貢献すると考えられます。本研究は、アスリートの
睡眠の質や疲労回復に対する水素吸入の影響について、実証的なデータを基に検証を行い、その有用性を明らかにすることを目的とします。
本研究では、17 名のアスリートを対象に、水素吸入が睡眠の質や疲労回復に及ぼす影響を調査しました。特に、疲労回復はアスリートのパフォーマンス向上において重要な要素であり、睡眠の質向上が疲労回復に寄与するとの仮説に基づき、水素吸入の効果を分析しました。
- 方法
本研究の対象は、17 名のアスリートで、年齢は異なるが、体力レベルや練習内容は一定に保たれた条件下で実験を行いました。対象者は以下の3つのクラスターに分けました。
-クラスター1:毎日、決められた時間に水素吸入を行うグループ
-クラスター2:毎日、決められた時間に水素吸入を行うグループ(クラスター1とは別条件)
-クラスター3:水素吸入を行わないグループ(コントロール)
実験は2024年7月29日から8月31日までの5週間にわたって行われました。期間中、各クラスターの練習強度と時間は均等と仮定し、被験者は週6日(月曜日から土曜日)にわたってFitbit Inspire 3 を着用し、体組成、HRV(心拍変動)、睡眠効率、睡眠の質、肌温変化、安静時心拍数など、身体に関連する様々なデータを収集しました。これらのデータを用いて、総合的な睡眠の質を評価するためのスコアを算出しました。このスコアは、高得点であるほど良好な睡眠の質と疲労回復が得られていることを意味します。スコアの算出ロジックについては、非公開。
- 結果と考察
a. クラスター1とクラスター3の比較:
クラスター1(毎日定められた量で水素吸入を実施)とクラスター3(吸入を行わない)について、実験期間中の第1週目と第3週目の総合スコアを比較しました。第1週目の平均スコアはクラスター1が77.7に対し、クラスター3は73.3という結果が得られました。さらに、練習の負荷が増大した仮定される第3週目では、クラスター1が70.75、クラスター3 が64.4と、クラスター1のスコアが依然として高い状態が保たれていました。スコアの減少幅に注目すると、クラスター1が6.95に対して、クラスター3は8.9であり、水素吸入を行っていないクラスター3の方がスコアの減少が大きいことがわかりました。
この結果から、水素吸入を継続的に行うことで、アスリートの睡眠の質が維持され、身体の疲労が軽減される可能性が示唆されます。水素が体内の酸化ストレスを低減し、炎症を抑制する効果があるとする既存の研究(Chen et al., 2010)【参考文献2†source】とも一致しており、水素吸入による身体の修復機能の活性化が、特に練習負荷の高い時期に効果を発揮することが明らかになりました。
b. クラスター1とクラスター2の比較:
睡眠前吸入の効果次に、クラスター1(第3週目:練習後15分水素吸入を実施)とクラスター2(第3週目:練習前15分と睡眠前30分の吸入を実施)について、第3週目と第4週目の総合スコアを比較しました。クラスター1では第4週目に、練習後15分に加えて睡眠前30分の水素吸入を実施し、総合スコアは70.75から73.84に上昇しました。一方、クラスター2では睡眠前の水素吸入を実施しなかった第4週目にスコアが79.65から75.25に低下する結果となりました。
このことから、水素吸入が睡眠前に行われた場合、より高い睡眠の質を得られる可能性が示唆されます。これについては、水素が睡眠中の酸化ストレスや自律神経の働きに影響を与え、睡眠の深度や疲労回復を促進する可能性が考えられます(Huang et al., 2016)【参考文献 3†source】。睡眠の質は、身体のリカバリーや精神的な集中力にも重要な役割を果たすため、疲労回復と睡眠の質向上に関連する生理的メカニズムを解明することが今後の課題となります。
- まとめと今後の展望
本研究では、水素吸入がアスリートの睡眠の質や疲労回復に対して一定の効果があることが示唆されました。毎日規定量を吸入することや、特に睡眠前に水素吸入を行うことで、睡眠の質が向上し、疲労回復に効果がある可能性が見出されました。しかしながら、本研究はサンプルサイズが17名と限られており、また5週間の短期間で行われたため、今後はより多くのサンプルと長期的な観察が必要です。
さらに、水素吸入の具体的なメカニズムを解明し、身体的・精神的に及ぼす影響の詳細を追求することが求められます。睡眠の質と疲労回復における効果を支持するためには、異なる年齢層や体力レベルのアスリートを対象に検証することで、より一般化可能な知見が得られると考えられます。また、今後の研究では、体内の酸化ストレスマーカーや炎症マーカーを併用することで、水素吸入の効果をより多角的に捉えることが期待されます。
参考文献
- Ohsawa, I., et al. (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature Medicine, 13(6), 688-694.
- Chen, J., et al. (2010). Hydrogen treatment reduces oxidative stress in patients with sleep apnea. Respiratory Research, 11, 183.
- Huang, C.S., et al. (2016). Hydrogen gas inhalation alleviates the oxidative stress of exercise and improves exercise-induced fatigue. Medicine and Science in Sports and Exercise, 48(2), 303-311
集約された選手データサンプルの例
①睡眠に関するデータ
②心肺機能に関するデータ
③各種スコアに関するデータ